岩谷時子賞

岩谷時子賞

さだまさしさんは、1973年にフォークデュオ「グレープ」でデビューされ、「精霊流し」「無縁坂」が大ヒット。その後ソロとして「関白宣言」「秋桜」など、今も愛される名曲を数多く生み出してきました。また、これまでに4,700回を超えるコンサートを開催しているほか、小説家・俳優など多彩な活動で幅広いファンの支持を得ています。さらに、国内外で「平和」や「いのち」を守るための支援基金を立ち上げるなど、社会貢献にも継続的に取り組まれていることが評価され、今回の受賞となりました

宇野亞喜良さんは1934年名古屋生まれ。1950年代末からグラフィックデザイナーとして活動を開始。 企業広告などのデザインを手がける一方、 鬼才のイラストレーターとして才能を発揮。 日本に「イラストレーション」「イラストレーター」 という言葉を広めた第一人者で、幅広い創作活動により今日に至るまで常に時代を牽引する、日本を代表するイラストレーター、グラフィックデザイナーとしての長年の功績が讃えられました。

大友良英さんは、映画やテレビの音楽を制作しながら、フリージャズやノイズをホームとされる音楽家です。東日本大震災以降は故郷・福島でも活動され、2012年芸術選奨文部科学大臣賞、2013年には「あまちゃん」でレコード大賞作曲賞を受賞されました。阪神・淡路大震災から30年の今年、両大震災へのレクイエムと未来を見据え作曲された「そらとみらいと」が大阪万博でも披露されるなど、その活動の数々の功績が今回の受賞につながりました。

島田歌穂さんは、1974年に子役としてデビュー。1987年『レ・ミゼラブル』エポニーヌ役で注目を集め、これまで1,000回以上同作に出演されてきました。世界ベストキャストにも選出され、英国王室公演に招かれるなど国際的に評価されています。最近は大阪芸術大学教授として後進の育成にも力を入れておられます。日本のミュージカル界を長年牽引し、卓越した歌唱力と表現力で観客を魅了し続けてきた点が高く評価されました。

エヴァー・アンダーソンさんは、 父親が監督であり、母親が主演の人気映画「バイオハザード: ザ・ファイナル」でデビューした、国際的に注目を集める若手俳優です。2023年に主演を務めたディズニー映画『ピーター・パン&ウェンディ』で大きな注目を集めました。幼い頃から日本の文化や言葉に深い関心を持ち、SNSでは流暢な日本語で岩谷時子の代表作でもある「恋のバカンス」を弾き語り、世界に向けて発信。自らの表現を通し、日本文化の魅力を世界に広める姿勢が評価され、今回の受賞に至りました。

中川優芽花さんは、デュッセルドルフ生まれ。2021年クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクール優勝され、ロンドンのウィグモア・ホール、ウィーン・コンツェルトハウス、リンツ・プルックナーハウス、ハンブルクのマルタ・アルゲリッチ音楽祭に出演するなど国際的な演奏活動を展開。現在は、フランツ・リスト音楽大学にてグリゴリー・グルズマン教授のもと研鑽を積んでいらっしゃいます。類まれなテクニックと表現力で注目を集め、現在最も活躍が期待される若手ピアニストのお一人です。

堀内優里さんは、第2回Kグランプリコンクール2位、第42回霧島国際音楽祭賞・音楽監督賞を受賞。大学3年の2021年には「題名のない音楽会」でプロデビューを果たし、これまでに東京交響楽団、札幌交響楽団と共演されてきました。また、今春からはフルスカラシップを受け、インディアナ大学大学院にてJ.エーネス氏に師事。着実な成長と国際舞台への挑戦が注目される、新進気鋭のヴァイオリニストです。

選考委員<五十音順 敬称略>

佐渡裕(指揮者)
別所哲也(俳優/ショートショートフィルムフェスティバル&アジア 代表)
村岡恵理(作家)

2025年11月26日 パレスホテル東京にて授賞式開催

岩谷時子賞【2025年 第14回】授賞式
左から竹下景子、堀内優里、宇野亞喜良、岩谷時子(写真)、島田歌穂、さだまさし、中川優芽花、大友良英<敬称略>

「岩谷時子賞」を受賞されたさだまさしさん
「岩谷時子賞」を受賞されたさだまさしさんは「中学2年の時に、加山雄三さんの『君といつまでも』を作詞した岩谷時子さんを知りました。それ以来、この日のために歩いてきた気がします」と心境をコメント。また、授賞式当日が、ソロデビュー50周年の記念日とのことで「お客様がいる限り歌い続け、良い詩を書くため努力します」と決意を新たにされている様子でした。そして、さださんは「いのちの理由」をギター弾き語りで披露。ギターの音色と、優しい歌声が会場全体に広がり、曲に込めた想いが伝わるステージとなりました。

「岩谷時子賞 功労賞」を受賞された宇野亞喜良さん
昭和42年に発行された岩谷時子にとって初めての書籍「岩谷時子作品集 愛の讃歌」の装幀挿画を手がけたこともある宇野亞喜良さん。「越路吹雪さんのポスターや岩谷さんの詩にイラストを描いた縁もあり、このような素晴らしい賞をいただくことができました。大変嬉しく思っています。ありがとうございました」と受賞の感想を話されていました。

「岩谷時子賞 特別賞」を受賞された大友良英さん 大友良英さんは「岩谷さんの作品を聴いて育った私がこのような賞をいただけるとは思ってもいませんでした。震災後の福島での活動も評価されたと思うので、これは福島の皆さんと一緒に獲得した賞だと思っています」 と心境をコメント。この日は、今年の大阪・関西万博の開会式でも演奏された「そらとみらいと」の大元になったという「空が映えた 2022年11月18日水曜日」をピアノとギター演奏で披露。静かな音の重なり合う響きが会場に広がり、そのサウンドに客席も静かに耳を傾けていました

「岩谷時子賞 特別賞」を受賞された島田歌穂さん 島田歌穂さんは「レ・ミゼラブル初演以来、岩谷先生には温かく見守り、支えていただきました。演じるたびに先生からエールをいただき、大きな力になっています。デビュー50周年でこの賞をいただけたのは、先生からの温かいメッセージと感じています」と生前の岩谷時子との交流を交えながら、受賞への思いを話されました。そして、ステージではミュージカル『レ・ミゼラブル』より「On My Own」を披露。感情の揺れを繊細に表現する歌声が会場に広がり、客席もその世界観に没入している様子でした。

「岩谷時子賞 奨励賞」を受賞されたエヴァー・アンダーソンさん エヴァー・アンダーソンさんは、スケジュールの関係でこの授賞式への参加は叶いませんでしたが、日本語でのビデオメッセージを寄せ「今回初の外国人として選んでいただき、日本文化を代表する賞に寄与できることを大変光栄に思っております。3年間日本語を教えてくださった先生、そして私を選んでくださった日本の皆さんに心から感謝申し上げます」などとコメント。受賞の喜びを表していました。

「岩谷時子 Foundation for Youth」を受賞された中川優芽花さん 中川優芽花さんは、選出にあたり「これまでご指導いただいた先生方、応援してくださる皆様に心より感謝申し上げます。岩谷さんが示した、言葉と音楽を通して人々の心に寄り添う精神を大切に、ピアノの豊かな響きを磨き続けてまいります」と感謝の気持ちを話されました。そして、ショパン「マズルカ 作品30-1および30-2」を披露。ピアノから紡ぎ出される繊細な音色に、会場全体が静かに聴き入っていました。

「岩谷時子 Foundation for Youth」を受賞された堀内優里さん 堀内優里さんは「財団や選考委員、ご指導いただいた先生方、そして何より家族をはじめ支えてくれた皆様に心より御礼申し上げます。岩谷時子さんの名前にふさわしく、歌心を大切に、丁寧に音楽を紡いでまいります」と選出への感謝とこれからの決意をコメント。この日はバッハ「無伴奏ヴァイオリン パルティータ第3番 ホ長調BWV1006 」より「プレリュード」を披露。明るい音色と躍動感が印象的で、瑞々しい才能を感じさせる演奏が客席を魅了しました。